なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

コロコロと感情通り変わる表情も、声色も長瀬とは正反対で、こういう人と付き合えたなら、もっと分かり合うことができたんじゃないだろうか……なんて思う。


だけど、それでも。


ふと気を抜くと浮かんでくるのは、長瀬のことばかり。


今さら未練がましいのは分かってる。


いい加減、忘れなきゃ。


どの道卒業すれば、長瀬とは二度と会うことはなくなるんだ。



「先輩。俺、アイツと長い付き合いだから言いますけど、アイツはすげー面倒臭いヤツですよ」


「……え?」


淡い木漏れ日に目を細めながら、浅木くんは言葉を紡いでいく。


「ムカつくこととか、人が動揺するようなことばっか平気で言ってくるくせに、肝心なことは言わないんですよ。甘え上手に見えて、結構甘え下手で、そのくせ不器用」


「そう…かな?長瀬は、何でも器用にこなすイメージだけど」


「全然!一見平然としてるからそう見えるんです。アイツポーカーフェイスだから。だけど俺、1回だけ見ちゃったことがあるんです……」


浅木くんの視線が今度はつま先へと下ろされる。


「アイツが、影でこっそり泣いてんの」


「なっ……」



長瀬が……泣く!?
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