なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
長瀬の顔は浮かんでくるのに、どうしても泣き顔に変換できない。
亀の走る姿を想像してくださいって言われた方がまだ上手く想像できる。
浅木くんが見たのは幻か何かじゃないだろうか……。
「酷い驚きようですね。心の声が聞こえてきます」
「ご…ごめん。だけど、全然想像がつかなくて……」
額に手をあてそう言うと、浅木くんがクスッ吐息を漏らした。
「泣いてたって言っても、小学校の低学年くらいの時ですよ」
「あ…そうか……」
つい、今の長瀬の姿で想像しようとしちゃってたけど、アイツも可愛い子供時代があったんだ。
年齢は違うけど、歩くんみたいな感じて想像すればいいのかな。
うん。それならちょっとは想像できる。
「アイツの両親が丁度離婚した頃なんですけど、その頃の俺が見る限り、アイツちっとも寂しがってる様子もなくて、まぁ元から親父さん家にいる人じゃなかったみたいだし、大してなんとも思ってないんだなって…子供心に思ってたんです」
「だけど」と言って、浅木くんは言葉を続ける。
「ある日、見ちゃったんですよ。体育館の裏でひっそり泣いてるアイツを……」