なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

そんな長瀬の姿に驚いて、浅木くんは長瀬に声をかけるのをためらったらしい。


だけど、浅木くんの存在に気づいた長瀬は「覗くな変態」という言葉だけを残し、浅木くんを置いて去っていったとか……。


何だろう。


やっぱり長瀬は長瀬だ。


期待を裏切らない。


「すげー憎たらしかったんですけど、アイツの泣き顔を見たのはあれが最初で最後だったんで、強烈に印象に残ってるんです。普段ふざけたアイツでも、不安だったり寂しかったりするんだなって…。だけど、それでも誰かに甘えたりしないのがアイツなんでしょうね」


浅木くんの話を聞いていると、本当は、長瀬と別れたあの日も、長瀬はもっと他に言いたいことがあったのかもしれないって思えてくる。


あの時、私が言葉を間違えなければ、ちゃんと聞いてあげられたのかな……。


“付き合わなければよかった”だなんて、恋愛っていう難しい事柄から逃げたいがために放ってしまった言葉。


あの言葉さえ言わなければ、ちゃんと話し合えたのかもしれない。


“たら、れば”ばっかり言ってたって仕方ないのに、後悔ばかりが次から次へと襲ってくる。



「でも、それがアイツの悪いとこでもあるんです!」
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