なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
金城くんの答辞が近づくにつれて、徐々に私の心臓も早鐘を打つように高鳴り始める。
うまく、息ができなくなってきた。
指先がこんなにも冷たい。
緊張と共に顔を出すのは“恐怖”。
私が守り続けた、平和という名の理想の3年間を、全てひっくり返すようなことをしようとしてるんだ。
怖くて当然だ。
逃げ出したい。
でも、逃げたくない。
自分を必死でなだめている間に、金城くんはすでに演台を前に立っていた。
そのスラリとした凛々しい姿を見て、女子達が静かにざわめき出す。
金城くんのファンの子達かな…。
だけど、金城くんが演台に手をかけた瞬間、体育館内はしんと静まり返る。
金城くんは一度大きく息を吸い込むと、ゆっくりその息を吐き出すようにマイクに向かって言葉を吐いた。
「みなさん、すみません。少しの間、卒業式乗っ取ります」
先生達が「は?」という顔で固まってる。
生徒達は何が起きたのかわからないようで、近くの人と顔を見合わせている。
騒然とする体育館内。
そんな中、再び金城くんが口を開いた。
「花枝。後はよろしく」