なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
その言葉を合図に、私は席から立ち上がる。
一斉に私へと集まる視線。
あぁ…。こんなに注目を浴びるのは、中学の時以来だ。
幼かったからこそ浅はかで、根拠のない自信に満ち溢れていた……あの頃以来。
痛みを知ってからの私は、自信なんてサラサラない。
こうして注目を浴びれば怖くて足がすくむし、すぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
でもきっと、だからこそ、今なら“勇気”というものが何かわかる気がする。
矢のように降り注ぐ視線の中、私は一歩一歩壇上へと続く道を踏みしめる。
何が起きたのか、未だ把握できていない先生達が、ただただ呆然と立ち尽くす前を通り過ぎ、壇上へと上がる。
壇上へ上がると、演台を前にした金城くんが、マイクスタンドからマイクを外し、私へと差し出した。
「どうせ今日で卒業だ。ぶちかませ」
そう言って、片方の口角を上げる金城くんに力強く頷いて、私はそれを受け取った。
しんと静まり返った体育館内。
私を見上げる、先生と生徒達。
ははっ。やばいな。
膝が笑ってる。
マイクを持つ手も、地面に着けた足も、全部自分のものじゃないみたいだ。
全身が心臓になったみたいに、強く激しく脈を打っている。