なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
生徒達の視線は、私から扉の方へ。
ゆっくりと近付いてくる足音に、私は言葉を紡のに必死で気付かない。
「私は、絶対に距離になんて負けたりしない!!だって……」
だって私は……。
「長瀬のことが、大好きだからっ!!!」
私はぎゅっと目を瞑り、力強く、めいっぱいそう叫んだ───。
「へぇ。そうなんだ」
––––と、同時に驚くほど近くから、返ってきた言葉。
私は驚き、声のした方に恐る恐る顔を向ける。
そこには、ゆっくりとした足取りで壇上へと上がってくる……。
–––––長瀬の姿。
「長……」
「センパイ。そんなに俺のこと好きなんだ?」
長瀬は、驚き固まる私の前に立つと、意地悪く口角を上げて、私の顔を覗き込んでくる。
「……っ」
熱を帯びてくる頬。
長瀬が今、私の目の前にいる。
それだけで、堪え切れない涙が頬を伝っていく。
「あーぁ。泣くし」
そんな涙を長瀬にしては珍しくちゃんと着ているブレザーの裾で、優しく拭ってくれる。
されるがままの私。
涙が次から次へと溢れてきて、一向に止まってはくれない。
そんな私に、長瀬はふっと口元を緩めると、スッと手を前に出し、何かを差し出した。