なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
ごちゃごちゃを抱えたままだって、下手くそな言葉だって、長瀬はこうして躊躇なく私を受け止めてくれる。



取り繕った平和なんかで自分を守らなくても、


私にはこうして、守ってくれる人がいるんだ。



それってなんて…



幸せなことなんだろう。








長瀬の体がゆっくりと離れていく。


同時にチッと舌打ちをする音が聞こえてきて、長瀬の顔を見上げた。



「ここじゃ、ダメだな」



「え?」



「センパイの可愛い顔、これ以上他のヤツらに見せたくねー」



その言葉にはっと我に返ると、一気に身体中の血液が沸騰し出す。



わ、忘れてた……。



ここここれって、全校生徒の前じゃないっ!!!




冷静になってみると、それまで見えていなかった周りの光景が、一気に目に飛び込んできて……。


「アレって例のヤンキーを手懐けたっていう先輩だよね?」とヒソヒソと囁き合う生徒や、私達をはやし立てる生徒。


先生を止めるための最終手段なのか、「あぁ!急にお腹が痛くなってきた!!ああぁ」と名演技をしている山下さん。


階段に地蔵のごとく座り込み、トレードマークのお団子ヘアーを微動だにしない茉莉。

< 330 / 345 >

この作品をシェア

pagetop