なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

な、何じゃそれはぁぁぁぁぁ!!!!


体育館の扉付近で、逃がした私達を悔しそうに見送る先生達に、長瀬の首にしがみついたまま“ごめんなさいごめんなさいと”何度も心の中で手を擦り合わせた。





この卒業式が、この後何十年も語り継がれることになろうだなんて……。


もし、この時の私が知っていたら、長瀬をひっぱたいてでも式に戻ってた。


………かもしれない。










***



「もう終わった……全て終わった……。私の3年間の努力って一体……」


「まだ言ってんのかよ」



まだ少し冷たい春風に乗って、ふんわり甘い花の香りがする。


私達が初めて出会った場所は、色とりどりのチューリップで埋め尽くされていた。


風に揺れる可愛らしいチューリップ達を背に、私達は花壇を囲うレンガの上に腰をかける。


遠くで、再開した卒業式を進行する先生の声が反響してくる。


金城くんも山下さんも茉莉も、平気かな。


怒られてないといいんだけど……。



「センパイ。何かごめんね」


「え?」


「ガキみたいに拗ねて」


長瀬がじっと私の目を覗き込んでくる。


その表情は無表情だけど、何だか反省している時の動物みたいだ。


「私の方こそ…ごめん。今まで…ちゃんと伝えてなかったから、不安だったよね」


「いや?そうでもねーよ」
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