なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

手に持ったチューリップを眺めながら、楽しそうにそう語る彼。


happyness……。


『…幸福…ですか?』


『うん。そう。君、新入生ですよね?』


『あ…まぁ、はい…』


『じゃあ、ハイ。これ手に待って!』


『え!?』


なわば無理矢理手渡されたピンク色のチューリップ。


彼は、それを持つ私の手を自分の手で優しく包み込む。


温かい……。



『どうか、君の高校3年間が、とても幸せなものになりますように』



ピンク色のチューリップの花に、願いを込めるようにそう言うと、彼は伏せていた目を上げてニッとはにかむように笑った。


その笑顔は、私の心をドンピシャに撃ち抜いてきて……。




簡単だった。


恋に落ちるなんて、もの凄く簡単なことだった。


よく、体に電気が走るみたいに、とか。


頭の中で鐘がなる、なんて言うけど、そんな大袈裟なことじゃなくて、本当に自然に、まるですぐそこにあったみたいに、簡単に恋に落ちてしまった。



後になって彼が先生だと知った時は、さすがに驚いたけどね。


どんだけ童顔なのよ。


新手のドッキリかと思ったわ。


だけど、“禁断の恋!?”なんていうショックはなかった。
< 39 / 345 >

この作品をシェア

pagetop