なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

「どうする?」「参加する?」と話し合っている生徒達の顔色からは、“面倒くさい”という感情が見てとれる。


まぁ。そんなものよね。


じゃなきゃ、今までだって、積極的に活動に参加してるはずだし。


自分の持ち場の仕事だけでも、やってくれてるだけよしとしなくちゃ。


なんて心の中で苦笑していれば、温かい手がポンと私の肩を叩いて……。


「僕から少し、話してもいいですか?」


相変わらず穏やかで優しい村田先生の表情が、そこにあった。


つい心臓がドキンと跳ねてしまう。


いけないいけない。


平常心。


「……はい。お願いします」


先生は、私に一度だけふっと微笑むと、教壇へと歩みを進めた。


「みなさんは、花を見るとどんな気持ちになりますか?」


先生が、よく通る優しい声でそう投げかけると、ざわめいていた生徒達がしんと静まり返る。


「花を見ると、多少なりとも穏やかな気持ちになるのは僕だけでしょうか?僕は、冷たいコンクリートだけの場所でお弁当を食べるのと、沢山の花で囲まれた花畑でお弁当を食べるのとでは、お弁当の味が全く違うように感じます。僕達美化委員の仕事は、そういうことなのかなと思っているんです」


先生は、穏やかに話を続ける。
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