なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
山下さんがうずくまる場所の花壇は、程よく湿り気を帯びていて、その周りも綺麗に掃き掃除されていた。
これ全部……長瀬がやったんだ……。
「……なんで?」
「……あ?」
「私……あんなこと言ったのに……」
“あんたは、黙って言われた通りにしてればいいのよっ!!!!”
あんな最低な八つ当たりをしたのに……。
なんであんたは離れていくどころか、
今、ここにいるのよ?
「俺が、黙って言われた通りにするようなヤツに見える?」
こいつ……ずるい。
なんで今、そんな顔をするんだ。
長瀬は、無駄に高いその背を屈めて、首を傾げるようにして私の顔を覗き込んでくる。
その表情は、普段ポーカーフェイスのヤツとは思えないほど意地悪に口角を上げていて、
だけどどこか優しい目をしていて……。
不覚にも胸が高鳴ってしまった。
……ってコラ。
気のせいだヤメロ。
少女漫画的ムードにもっていかれても困りますから。
気のせい気のせい。絶対に気のせいだ。
私がこんな年下ヤンキーに、ドキドキなんてするはずない。