下手くそな恋を泣きながら


「そういえば、結婚式の日、彩葉体調があんまり良くなかったんじゃなかったか?」

「へっ?」

「そうそう。あの日、お前、なんか元気なさそうだったからな。

心配だったけど状況が状況だったから、また次に会った時にでもどうしたのか聞こうと思ってたんだ。」

思い出してスッキリしたように笑う先生を前に、私は込み上げる想いを飲み込んだまま

息が詰まりそうで

笑う先生を見つめるだけで精一杯だった。



先生は

私を見ていてくれた。

あの日も

そう

いつだって先生はちゃんと見ていてくれた。

それが時に、どれ程残酷な優しさになるかも先生は知らずに・・・


こんな話をするくらいだ。

先生はきっと

やっぱり

私の気持ちになんて気づいてない。


どこまでも届かない私の想いなんて

知りもしないくせに

元気がないことだけはいつも見透かしてくる。


その優しさが

私には痛いなんて・・・知らないでしょ?


目頭が熱くなる。

泣きそうになるのをなんとか堪えながら

「覚えてないな・・・」なんて答えるのが精一杯。


きっと

今の私は世界中で一番、惨めな想いをしているに違いない。


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