下手くそな恋を泣きながら
すると先生は「予想より早い」と誰が来たのか知ってるような言い方でくすくす笑った。
「誰・・・?」
呆気に取られて聞くと先生は愉しげに「彩葉の保護者」と笑った。
と、言っても、まさか両親なわけない。
戸惑う私の手をとり立ち上がらせると、先生は優しく私の髪を撫でた。
「ごめん。駅で彩葉を見つけた時、急に朝まで彩葉の″先生″でいられる自信がなくなっちゃったんだ。
帰る時間だよ」
私の目を真っ直ぐに、優しく見つめる。
その言葉のもっと深い意味が知りたいのに
私に返事をさせる暇も与えず手を引いて玄関へと連れてくる。
鳴りやまないドアを叩く音。
「今開けるから」とやっぱり愉しげに笑う先生が玄関の鍵を開けると
外側から勢いよく扉が開け放たれて
そこには、余裕の無い表情の部長の姿があった。
「ぶっ・・・部長⁉」
驚いて先生の顔を見上げると「俺が買い物しにいってる時に電話して迎えに来るように、呼んだの」と笑う。
でも
部長は送別会に参加してるはずじゃ・・・
驚いて言葉を失う私の手を、部長が荒々しく引き寄せた。
「お前に頭下げられた通り、迎えに来たからな!!
疲れた!!」と苛々した様子で先生を睨み付ける。