下手くそな恋を泣きながら
「送別会は最初の10分くらい。仕事が残ってるって嘘ついてでてきた・・・」
「・・・ごめんなさい。」
「別に俺は春坂に頼まれただけで・・・森山が謝ることじゃない。」
「それでも・・・」
やっぱり止まらない涙。
頼まれたくらいで、ただの部下のためだけに職場の付き合いを投げてこんなとこまで来てしまう部長のお人好しさに・・・
駅で私を止めたときの言葉に・・・
胸が苦しくなるから・・・
部長に迷惑かけるつもりなんかなかったのに・・・
「何で泣いてんだよ・・・
・・・まさか、春坂となんかあったのか⁉」
驚いたように私に振り返る。
「何も・・・あるわけないじゃないですか・・・
何かあるわけないじゃないですか・・・」
春坂先生が私を元教え子以外の目で見てくれるわけない。
俺はいつでも″学校にいるよ″の言葉で
なんとなく
そう感じた。
「春坂はちょってふざけてる面もあるけれど、本質は凄い真面目な奴なんだ・・・
だから
だから・・・あいつは教師としてなら森山の望みを叶えてくれるかもしれないけれど
森山の個人的な願いまでは叶えられないよ。」
呟くように、私から視線を逸らす部長。
それも・・・なんとなく分かってる。
教え子思いの先生が
教え子を傷つけるようなことをしないって・・・
知ってても
自分に都合良く考えたかった。