下手くそな恋を泣きながら
「も、森山?・・・だよな?
なんでここに?」
幽霊でも見たかのように固まる部長。
「ぶ、・・・部長こそなんでここにっ⁉」
思い出に導かれるように
初めて一人で旅に出た。
そんな休日にまさか
会社の上司と鉢合せてしまうなんてっ・・・
気不味いでしょ・・・
こんな偶然・・・
マイナス方面の奇跡じゃん。
「俺は・・・用事があってここに来たんだよ」苦笑いを浮かべる部長の姿はいつもとたいして変わらないスーツ姿で、若干違って見えるのは、何気に髪が整っているような気がすることくらいだ。
「も、もしかして・・・休日にお仕事されに来てたんですか?」
「まさか。休日くらい俺だって休むさ。
予定がなくなったんで、ホテルの近くのこの公園を散歩してただけだ。」
「そ、・・・そうだったんですね。」
それなら、さよなら。と言うタイミングを逃してしまって、非常に気不味い雰囲気。
「森山は?一人・・・?なわけないか。」
「・・・一人ですよ。初めての一人旅です。」
プライベートで上司と会うのは想像以上に気まずくて
目も合わせられないのに、逃げることもできなく
なんとなく流れに身を任せて肩を並べてベンチに腰を掛けた。