下手くそな恋を泣きながら


「届かないって解ってるから、伝えることを諦めたいのに

好きって気持ちが言うことを聞いてくれないからっ・・・

だから辛いんです」

言葉にすればするほど

望みがないことを思いしされるようで

悲しくて

痛くて

どうしようもなくなってしまう。


好きだから

好きだけど

好きなのに


こんな言葉がぐるぐる頭の中を回るから

どうしていいのか分からなくなる。

「どうすれば、楽になれるのか・・・部長は知ってるんですか・・・?」

その横顔を真っ直ぐ見つめた瞬間

その腕に抱き寄せられて

思わず

息を飲んだ。


「黙って俺の側にいろよ」

「なんで・・・?だって・・・」

部長には恋人がいるのに

そう言う前に

重なった唇。

何度も何度も先生に失恋したような気持ちで

壊れてしまいそうだった。

そんな時、触れた誰かの優しさと温もり

頭の中を麻痺させてしまいそうなほど

言葉以上に私を包んでくれた気がした。

春坂先生に失恋ばかりだからって

直ぐに部長に切り替えられるほど柔軟な心はもっていない。

なのに

このキスが嫌じゃなかった。

嫌だったのは・・・

部長には恋人がいる。

その事実を知ってしまってることだった。


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