下手くそな恋を泣きながら


「・・・どうして私を誘ってくれたんですか?」


恋人の事は言葉にできなかった。

その言葉を使う勇気がなかった。

すると、部長は何かふっきれた様子で、真っ直ぐに私を見て、もう一度穏やかに頬笑んだ。

「同じ相手に失恋ばかりして、ようやく目が覚めたんだ。

俺は森山・・・やっぱり君が好きなんだって認めざるおえなくなった。

君を誰にも渡したくない。」

同じ相手に失恋ばかり・・・まるで私と同じ。

部長は・・・

私が知らないだけで、もしかしたらとても苦しい恋をしているのかもしれない。

その言葉を聞いて

初めて部長と親しくなったあの日・・・

朝まで私に付き合ってくれた部長が

私と部長のことを″似たもの同士″と、とても悲しい笑顔を浮かべた事が突然、鮮やかに思い出された。


ああ・・・

だから部長は私にあんなにも優しくしてくれたんだ。

私の痛みを

部長も知ってるから・・・

だから辛いとき

いつだって側にいてくれたんだ・・・


同じ痛みを知っていて

諦めたくても諦められなくて

苦しくて

辛くて

だから

部長は、自分と同じように先の見えない、望みのない恋をしている

似たもの同士の私を選んだんだ・・・

私が部長に選ばれたのはきっと・・・

傷の舐めあいをしたかったからだ・・・。

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