下手くそな恋を泣きながら
家に帰っても、時間ばかり経つのが遅くて
だからといって、眠れもしない。
気を紛らせるために仕方なく、ウォークインクローゼットの中を整理し始める。
″無″でいたい。
余計な事は何も考えたくない。
いつか着るだろうと思っていて段ボールにしまいこんでいたお姉ちゃんからもらったお下がりの服。
ここに引っ越してきた当時はまだ自分には大人っぽすぎるだろうと思っていたけれど、今、鏡の前で合わせてみると、自分も歳をとったんだな。と感じる。
趣味に合うものと合わないものを選別していくと、段ボールの底に、写真屋さんの分厚い封筒が眠っていた。
「こんなとこに写真なんか入れた事すら忘れてた」
たぶん引っ越しの時にポンポン考えなしに入れてしまってたのだろう。
取り出した写真の束の一番上には私の就職祝いの家族パーティをしたもの。
1枚、1枚、めくると同時に過去に遡っていく。
地元の友達と写ってる写真に
まだ独身の頃のお姉ちゃんとのツーショット。
そして、春坂先生の結婚式の時の写真がでてきて
写真をめくる指が止まる。
・・・いつ見ても
悲しい思いで。
新郎の席で、先生も友達も最高の笑顔で写ってる中に、一人だけ貼り付いたような笑顔の私。