下手くそな恋を泣きながら


「私って・・・年上とばかり縁がある。」

泣きながら

自分の一人言にくすくす肩を震わせた。

「きっと・・・あなたは私を嫌いになったよね?」

写真の中の部長に問いかけた。


答えは

今の部長にしか分からない。

答えなんか知りたくない。

怒った部長の顔ばかり過るんだ。


写真を封筒の中にしまった時

携帯の着信と同時に部屋のインターホンが鳴った。

電話の相手は、驚き事に部長で、鳴り響く携帯を握りしめたまま

この電話にでるべきか分からず

悩みながら

それでも通話ボタンを押して

玄関に向かって歩きだした。

携帯とインターホンと同時に鳴るなんて・・・

携帯を耳にあてたものの・・・言葉がでない。

「森山・・・帰ってるのか?」

耳元で部長の息をきらしてるような声が響いている。

「はい・・・帰宅してます。」

玄関のノブに手をあてたのと同時に

「それなら早く開けろ」と耳元で部長の声。

ハッとして

ドアノブを回し開けたそこには、額に汗をかいて、息をきらした部長がそこに立っていた。

「部長・・・?」

驚いてその顔を見上げた瞬間、その胸にきつく抱き締められて身動きがとれない。

パタンと閉まった扉の音。

狭い玄関

汗の混じった部長の匂い

「あのあと直ぐに追いかけたけど、森山いなくて・・・

あんな所に連れて行ったのは俺だし・・・

どっかで迷子になってんじゃないかって

不安だった。」

そんな部長の体は微かに震えてるようにも感じた。


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