下手くそな恋を泣きながら


「迷子って・・・子供じゃないですよ私。

それに、途中からタクシー使いましたし。」

冷静を装い、返事をする。


あんなに

ひどい事を言ったのに

それでも

どうして部長はこんなにも私に優しくしてくれるの・・・

どうして

こんなに、息をきらして、汗だくになってまで

私を心配するの・・・?


どうして

こんなに

愛されてるのかもしれないと・・・感じてしまうの?


「すまない。森山が何に怒ったのか俺には分からない。

何か気に障る事を言ったなら謝る。

だけど

俺を嫌いじゃないなら・・・

離れていこうとしないでくれ。」


嫌い・・・?

嫌いなわけない。

離れる?

離れようとしたら

こんなにも

心が痛かった。


この胸にもう一度抱き締められて

改めてなのか

もしかしたら

初めて知ったかもしれない。



私・・・

部長に抱き締められると

こんなに

弱くなる。

部長の前でだけいつも

素顔でいられる。


部長の腕の中がこんなにも居心地が良いなんて

知ってたようで

知らなかった。


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