下手くそな恋を泣きながら


着いたのは駅から少し外れた人通りの少ない民宿の前。

ここに

先生はいるのだろうか・・・?

もう一度携帯を取り出し電話をかけた。

「彩葉です。

着きました・・・」


「ごめん。今、気分転換がしたくて近くの公園にいる。」

電話で話ながら先生に誘導してもらう。

寂れた町並み。

先生がこんな田舎町に逃げたのはきっと・・・

寂しかったからなのかもしれないと・・・

勝手に考えながら歩いていた。

「近くに金物屋さんがあります。」

「そこ、左に曲がって暫く進むと無人の野菜販売所があるんだ。

その直ぐ斜め向かいの公園にいる。」


先生が歩いた同じ道を歩く。

先生は何を思いながらこの知らない町を歩いたんだろう・・・

まるでその足跡を探すように、一歩、一歩、前に進む。


とても不思議な気分だった。

それ以上の会話がなくても、繋がったままの携帯。


先生に想い焦がれてこの長い時間の中で

なぜだか今一番、先生を近くに感じてる気がする。


目の前に野菜ね無人販売所、視線を向けるとその斜め向かいに少し奥に隠れるように小さな小さな公園の看板が見えた。

ようやく

会える。


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