下手くそな恋を泣きながら


「それで・・・?」

バスタオル腰に震える声が聞こえてくる。

「部長のこと・・・好きだって

気が付いちゃったんです。」

「・・・なんで?」

「分からないけど

先生への気持ちに整理がついた時・・・

意地をはらなくて済んだ時

あの日・・・

風船が部長までの道を導いてくれたあの日から

きっと私・・・少しずつ部長に惹かれてた。」


そう

あの日、終わらせる恋と始める恋と二つの運命に向き合うために

あの風船はちゃんと私を導いてくれた。


「・・・嘘だろ?

突然・・・

そんな・・・

夢みたいな話・・・」


震えたままのその声。

そっとバスタオルを避けると

頬を染めて探るように見つめてくるその瞳と重なった。

「私も・・・部長が好きです」

ゆっくり

近づいてくる唇。


そっと

距離をとったから

私にキスをしようとしていた部長の眉間に皺がよる。


「・・・なんだ?

なんでキスさせてくれないわけ?」


避けられた理由が分からず訝しげな表情。


「好きだからハッキリさせたいことがあります。」


真っ直ぐに

部長の目を見た。

私に

笑う余裕なんかない。



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