下手くそな恋を泣きながら
「今日はたくさん案内していただいてありがとうございます。」
助手席で頭を下げた私に部長は優しい笑顔を見せる。
「俺も、一人でいなくて済んだし、森山に感謝だよ。」
「部長・・・槙原さんは一人行動は苦手なんですか?」
男の人でもそういうのが苦手とかあるんだ。と、意外そうに聞いた私に「今日だけはね」と呟く。
それを聞いた私は
キャンセルになった予定。に何か関係してるのかもしれないと悟って、それ以上は何も聞かなかった。
「そうだ。ホテルに送る前にちょっと付き合ってもらえるかな?」
「ええ・・・大丈夫ですよ。」
そう言って槙原部長が車を走らせたのは、駅から少し離れた場所にある中学校。
車から降りた部長は真っ直ぐ校庭へと向かう。
「母校なんだ。」
懐かしそうに目を細めながら周りの景色を眺め、ゆっくり歩く部長の歩幅に合わせて
私は静かにその隣を歩いた。
「ごめんな。せっかくの観光なのになんか、俺の思いでの場所ばかり行ってたかも」
「とっても楽しかったです。」
誰かの思い出を辿ることなんて、早々、経験できることはではない。
それはどんなガイドマップにも載ってない観光名所だ。