下手くそな恋を泣きながら
校庭の鉄棒の辺りに人影を見つけた槙原部長は大きく手を振った。
「待たせて悪いな。」
「誰かと待合せしてたんですか?
私が一緒でも大丈夫なんですか?」
多少、戸惑いながら不安で部長を見上げると
「野暮用だからすぐ終わる」と私の頭を軽く撫でた。
気を使った私は、部長達から少し離れた所で立ち止まり、二人が話し始めたのを確認してから
私の知らないこの学校の敷地を少し見て歩いていた。
「関係者の方ですか?」
背後から突然聞こえた声に、慌てて振り返る。
「知り合いの用事で・・・付き添いです。」
軽く頭を下げて見上げたそこには・・・
私が大好きだった
春坂先生の姿があった。
まさか本人・・・?
暫くぶりに見たその姿に、一瞬、鼓動が飛び上がるように跳ねた。
そんな私を、最初は訝しげに見ていた先生の表情が、段々と柔らかくなる。
「もしかして・・・彩葉?
・・・森山彩葉か?」
驚きながら頷く私に、「大人になったな」嬉しそうに歓声をあげながら歩み寄り
昔のように頭を撫でてくれる。
まさか先生がこんなところにいるなんて思いもしなかったし
ましてや
こんな奇跡が起こるなんて思いもしなかった私は
感情がストップしてしまったかのように
何も言えず
先生をただ、見つめた。