下手くそな恋を泣きながら
失恋してから8年だよ?
8年も会わないでいたのに・・・
私のことなんか忘れてくれてて良かったのに
その優しさが
私を傷つける。
だけど
その優しさに惹かれて恋をしたのも
他の誰でもない
私だった。
「先生は・・・相変わらず優しいね。悩みなんか・・・ないよ?」
涙をこらえながら笑顔をつくると
ため息をつきながら困ったように笑い、ポケットから携帯をとりだした。
「何年経っても彩葉もみんな、俺の大切な生徒のままだよ。
携帯もってるんだろ?
ID教えるからいつでも連絡してこい。」
そう言って自分のIDをメモして私に差し出す。
「迷惑とか気にしなくていいから。
社会人。
大変なんだろ?
ま、槙原も良いやつだけど、俺はその千倍良い男なのは彩葉も知ってるだろ?」
冗談混じりに笑う。
先生が良い男なんて
とっくの昔から知ってる。
私はわたされたメモを握りしめながら、風船のことを思い出していた。
あの風船に導かれて部長と会って
その部長が偶然にも私を先生のもとへと連れてきてくれた。
これは
単なる偶然なんかじゃないのかもしれない。