下手くそな恋を泣きながら
「運命」その2文字が頭に浮かんだ。
幸せの象徴のあの風船が
私と先生を再会させてくれた。
忘れていたわけじゃなかった。
ぎっちぎっちに閉じ込めて
無理矢理鍵をしめていた
たくさんの感情がその小さな箱から溢れだして
心を震わせる。
私はまだ
先生の事が好きなんだ。
そうハッキリ確信した瞬間
思わず私は先生の服の袖をギュッと握りしめていた。
「先生は今、幸せっっ⁉」
突拍子もない質問に、驚いたあとで吹き出して笑う先生。
「俺は幸せな教師だよ?
だって・・・」
そう言いながら私の頭を優しく撫でる。
「俺の生徒がみんな素直に優しく、立派に成長してるんだから」
優しく笑いながら私の顔を覗きこむ。
「そうじゃなくて・・」
そう言いかけた時だった
「いなくなったと思ったぞ」と槙原部長が駆けてきた。
私は部長の姿を視界に捉えて、言葉を飲み込んだ。
「なに?お前ら知りあい?」
私たちを見て部長が驚いたように笑うと、先生の注目はもう私には向いていなかった。
二人が話すのを黙って聞いていた。
「へぇ。森山はお前の教え子か。だからこんなにのんびりしてんだな」なんて
私を巻き込んで話をしないでもらいたい。