下手くそな恋を泣きながら
ホテルのエレベータの中
先に5階を押した私の後に続いて2階のボタンを押す部長。
なんとなく言葉を失っていた。
なんだかんだ言っても今日は部長のおかげで楽しく過ごせたことと・・・
春坂先生に会えたんだ。
エレベータが2階に止まったらちゃんとお礼を言わなきゃいけない。
地下から順番に点滅が移動していく。
すんなり2階を示したランプが点滅するとと同時にエレベータの扉がゆっくり開いた。
「じゃあな。
明日は気を付けて帰れよ」
「はい。
あの・・・」
私がお礼を言う前にしまり始めた扉。
思わず伸ばした手を、部長が慌てて引っ張る。
エレベータから放り出されるように勢いに任せてすっ転んだ私を、部長はなんとかその体で受け止めてくれた。
私を置いてエレベータは音もなく5階へと上っていく。
「危ないだろ!なにやってんだっ!!」
耳元で聞こえる部長の怒鳴りご声。
確かにその大きな声に驚いたこともあるかもしれないけれど
私の鼓動は
部長の匂いに包まれた瞬間から高鳴り始めていた。
きっと
春坂先生との再会であんなにも一気に感情が湧き出たせいか
私の中のときめき回路が誤作動を起こしてるに違いない。