下手くそな恋を泣きながら
確かに私は親友にだってこの気持ちを打ち明けることはなかった。
でもだからと言って・・・
「俺が聞いててやるから言ってみろよ。」
「へっ?」
そんなことを突然言われても・・・
「気が済むまで聞いててやるから」
「でも・・・」
躊躇する私を、部長が優しく包み込むように抱き締めた。
「悩める部下への貢献だ。セクハラで訴えるなよ?」
耳元でで聞こえる真面目な声に、私は瞼を閉じて頷いた。
いざ、言葉にしてみろと言われても
ずっと閉じ込めてた想いを口にすることがなかなか難しい事を感じながら
私は、春坂先生を意識し始めた頃の事を無意識に思い出していく。
部長の体温が心地よくて
恐くて向き合えなかった想いに、夢を見るように優しく触れていくことができる。
どこか遠くの部屋のドアの開け閉めの音が聞こえてくる位に静まり返った部屋の中。
部長が抱き締めていてくれるから、まるでこんな静寂さえも私に寄り添ってくれている。
そんな風に感じる。
好きになり始めた事にきっかけはなかった。
いつも優しい笑顔の先生が、先生として最初から大好きだった。
もしかしたら
きっかけは、そんな先生を周りの女子達もカッコいいといい始めた事で感じた焦りだったかもしれない。