下手くそな恋を泣きながら


「とりあえず、旅館が良かったけど、贅沢は言えないもんね・・・。」

予約したビジネスホテルのサイトをもう一度携帯で確認する。


ゴールデンウィークという旅館やホテルにとっては繁盛期に、空室を探すことほど大変なものはないと、初めての一人旅が無計画すぎたことを知ることになったのは、4件目の旅館を断られた頃だった。


ビジネスホテルって、なんとなく古そうな汚そうなイメージを勝手にもってて眼中になんかなかったけど、凄く綺麗な所がネットにたくさん載ってるのなんの。


この時代にアナログで昭和気質な私にとってはネットで予約なんて革命的なことだった。



まあ、私が帰省すると思い込んでいた親からは電話でかなり叱られたけど・・・。


なんとなく

ふと、思い出したあの景色をもう一度見たい衝動に駆られたんだ。


なんでだろう・・・良い思いでなんかじゃないのに。



初恋の人が結婚をしたあの式場の

カラフルな風船を吸い込んでいく、雲ひとつないあの青空。



たまに、夢に見る。


伝えることもできなかったあの想いがくすぶってるように・・・

あの人の幸せそうな笑顔と

ぴんく色の空気。


それと・・・


笑いながら

泣いていた私の心。




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