下手くそな恋を泣きながら
思い出が次から次へと
まぶたの裏に見えるからかもしれない。
でも
それは叶わない事だって
ちゃんと、理解してるからかもしれない。
駄々っ子なだけだって・・・
知ってるからかもしれない。
「先生が好き・・・」
ぎゅっと部長に抱きついてその胸に顔を押し当てた。
部長のワイシャツが濡れちゃう事を気にかける余裕なんかなかった。
ただ
静かに私の一人言を聞いてくれている優しさは
まるで
私を宥めてくれているような空気のようだった。
私の声だけ聞こえる部屋の中
泣き疲れて眠ってしまうまで
私の先生への想いは言葉に変わって途切れなかっただろう・・・
新しい朝の光が部屋に差し込むまで
私はずっと
部長の腕の中で守られていた。
少し肌寒い空気に目を覚ますと
私を抱き締める窮屈で優しい腕の存在に気がついて
慌てて飛び起きた。
部長は、昨日のスーツのまま眠っている。
「ぶ・・・部長?」
小さな声で呼んでみても、部長は目を覚まさない。
私のせいで皺くちゃになったスーツ。
たった一言、お礼を伝えたかっただけだった。
部長のお陰で私は
何だろう
昨日までと違って・・・
少しだけ
体の中がスッキリと軽くなっていた。
先生への気持ちがなくなったわけじゃないけど
それでも、不思議と晴れやかな気分だった。