下手くそな恋を泣きながら
「ワイシャツ・・・マスカラいっぱいついちゃってる。」
マスカラで汚れたワイシャツに指をあててみると、部長のお人好しぶりに少しだけ切ない気持ちになった。
「いっぱい迷惑かけて・・・取り乱してごめんなさい。」
「謝るなよ」
私の声で目を覚ましてしまったのか、目をこすってまだ眠たそうな部長が体を起こした。
「どうだ?スッキリしたか?」
プライベートの部長は優しすぎる。
「少し・・・」
その優しさにつけこんだわけじゃないけれど、部長の休日丸々一日を私が潰してしまったような申し訳なさで肩を落とすと、部長は困ったように笑った。
「部長がこんなに優しい人だったなんて、ずっと一緒にいたのに今まで知ることもありませんでした。」
より一層、肩を落とした私の頭をぽんぽん叩いた後で一度だけその手のひらが私の頬を撫でた。
「別に俺は優しい訳じゃないぞ。
もしかしたら、森山に自分を重ねたのかもしれない。
似た者同士なのかもしれないな。」
そう呟くと
今にも泣き出してしまうわんじゃないかと感じるほど、哀愁の表情を浮かべて笑った。
笑っているのにどうしようもないほど悲しそうな笑顔を見た瞬間
私は似た者同士の意味を聞いてはいけない気がしたんだ。
だけど
きっとそれ以上に瞼に焼き付いたその笑顔の果ての無い悲しさに圧倒されて
言葉がでなかったのかもしれない。