下手くそな恋を泣きながら
優しさとタイミング
「それより、森山も夕方には電車に乗るんだろ?
気を付けて帰れよ?
俺は約束があるからもうそろそ先にチェックアウトするから」
「はい。
本当にお世話になりました。
部長も帰りは気を付けて運転して下さいね」
「ありがとう。」
去り際、振り返りたい気持ちを抑えて部屋を出た。
結局私は夕方まで部屋で考え事をしていつの間にか時間が潰れて
自宅に着いた頃には何か、やりきれない気持ちだけ残っていた。
きっと今日の部長の予定というのは春坂先生が言ってた人との約束なんだろう。
私とデートをしていると勘違いされてしまったら困るような相手といえば恋人に違いないだろうけど
なんとなく
つまらない気持ちがそこにはあった。
むしろ部長の年齢で結婚してないのも不思議なところだし。
そうやって考えると
歳の差というのは年上の相手から考えたら大きなことなのかもしれない。
私より少し上の佳苗先輩があんなに結婚に対して焦りを感じてるのも、なんとなくだけど理解できる。
私は大人になって、なんでも知ってるつもりの子供に過ぎないのかもしれないと
部長の悲しさそうなあの笑顔を思い出すたびに
身に染みて感じてしまう。
恋愛が人生の全てではないけれど
恋はこんなにも自分の全てを支配してしまうものなんだって・・・
春坂先生と再会して思い知らされた。
あの風船はやっぱり
私を先生に導くために飛んできたのかもしれない。