下手くそな恋を泣きながら
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「あんたって本当に気が利かないわねー。」
連休明け、いつもに増して機嫌の悪そうな佳苗先輩が、部長の買ってきたお土産のクッキーを食べながら、あきれた様子で私を見ていた。
いや、私だって買おうと思ってたんですよ?
あの時、あの風船が現れなきゃ、私は迷うことなくお土産屋さんに入ってましたよ?
それを言ったところで言い訳にしかならない言葉をコーヒーと一緒に飲み込む。
「だからあんたは彼氏ができないのよ」
「そうかもしれません・・・」
先輩の嫌味をBGMに聞きながら、更衣室のロッカーの中で待機中の部長へのプレゼントのことを考えていた。
汚してしまったワイシャツの代わりにと新しいものを買ってきたんだけど、さすがに就業中に皆の前で渡すことなどできない。
それに
休み明けの部長は、あんな出来ごとなど忘れてしまったかのように、いつもの部長らしい部長に戻っている。
あれが大人の対応と言うやつなんだろうか・・・
「あーあ・・・今日はあいつの家に押し掛けてやるか」
「彼氏さんの家に行くんですか?」
「他に誰がいるのよ」
この人は言い方がキツかったり、あまり性格は良くない先輩だけど、彼氏さんへの積極的な一途さと、常に鏡を意識しているところなんかは、同じ女として尊敬してしまうほどのレベルだ。
私は化粧直しを始めた先輩を休憩室に置いて、ロッカーにプレゼントを取りに行く。