下手くそな恋を泣きながら
*********
気が付けば陽気な日が続くようになって
肌寒さも感じなくなり始めた頃
私はあれからようやく
春坂先生の連絡先を携帯に登録した。
携帯のアプリ内で自動的に相手にもそれが分かる。
今時のアプリはすごいもんだ。
まだ・・・連絡する勇気は持ててない。
話したいことはたくさんあるけれど、迷惑になりそうで恐い。
でも、私の携帯の中に春坂先生の連絡先がある。
ただそれだけで幸せ。
ついさっきまで、ただの連絡手段にすぎなかった携帯電話が、一瞬にして宝物へと変わったようだ。
「なに、にやにやしてんのよ?」
突然、頭上から聞こえてきた佳苗先輩の声に驚いて、手の中から携帯を滑り落としてしまった。
「に、にやにやなんかしてませんって!!」
「なに慌ててんのよ・・・」
呆れたようにため息をつくと、先輩は私の向かいに座ってお弁当箱を開く。
よく考えれば、先輩って私のことなんか嫌いなのかな?って思うほど嫌みばかり言うくせに
いつも私の近くに来るんだ・・・。
もしかすると、本当は私の事が好きなんじゃないの?
何気にそんな風に考えてみると、理由もなく勝った気分になる。