下手くそな恋を泣きながら



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気が付けば陽気な日が続くようになって

肌寒さも感じなくなり始めた頃

私はあれからようやく

春坂先生の連絡先を携帯に登録した。

携帯のアプリ内で自動的に相手にもそれが分かる。

今時のアプリはすごいもんだ。


まだ・・・連絡する勇気は持ててない。

話したいことはたくさんあるけれど、迷惑になりそうで恐い。

でも、私の携帯の中に春坂先生の連絡先がある。

ただそれだけで幸せ。

ついさっきまで、ただの連絡手段にすぎなかった携帯電話が、一瞬にして宝物へと変わったようだ。


「なに、にやにやしてんのよ?」

突然、頭上から聞こえてきた佳苗先輩の声に驚いて、手の中から携帯を滑り落としてしまった。


「に、にやにやなんかしてませんって!!」

「なに慌ててんのよ・・・」

呆れたようにため息をつくと、先輩は私の向かいに座ってお弁当箱を開く。

よく考えれば、先輩って私のことなんか嫌いなのかな?って思うほど嫌みばかり言うくせに

いつも私の近くに来るんだ・・・。

もしかすると、本当は私の事が好きなんじゃないの?

何気にそんな風に考えてみると、理由もなく勝った気分になる。




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