下手くそな恋を泣きながら
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電車で片道2時間半弱。
免許はもってるけど、車を持ってないので結局、何をするにも交通機関に頼るしかない。
免許は親がうるさいから頑張って取得したけれど、身分証代わりにしか役立っていない。
と、いうか・・・免許とって数日目にしてお父さんの車を車庫にぶつけたトラウマから、車を運転するのが恐いだけ。
事故にびくびくしながら運転するなら、交通機関のほうがよっぽど快適に移動できる。
まあ・・・隣に座る相手を選べないのは難点だけど。
目的地までの長い時間、隣に座っていたおじさんのいびきから、ようやく解放されて電車を下りたその先には、あの人の結婚式以来の懐かしい風景が広がっていた。
17歳。
仲の良い友だちと一緒だったから
ずっと泣くのを我慢して笑顔を作り続けたあの苦しい日。
私の初恋の相手は中学校時代の担任。
誰にも打ち明けることができなかった私の初恋。
女生徒から人気者だった先生。
いつか誰かが冗談半分で聞いた質問。
「先生、私と付き合ってよ。」
周りの女子たちがキャーキャー騒ぎながら先生を取り囲む輪の外で
私は次の授業の仕度をしながらも
内心ドキドキしながらその返事に聞き耳をたてていた。
「まずは立派な大人になれよ。」
取り囲む生徒たちの頭を笑いながら出席簿で軽く小突いた先生。