下手くそな恋を泣きながら


「不調の先輩をお姫様抱っこしてたじゃないですか?」

「御姫様抱っこって・・・歩けないなら仕方ないだろ医務室から担架運ぶより早い。」


「ああいうの、女子的にはきゅんきゅんするんですよ?」

「どうせ、顔が好みの男に対してだけだろ?そうじゃなかったら直ぐに、セクハラ扱いなんだろ?」

多少は・・・正解ですが。

女子心に対しては意外と現実的で冷たい部分があるように感じる。

そんな話をしながら歩いていたせいか、話に気をとられ、段差を踏み外してしまった私を、転ばないようにパッと自分に引き寄せる。


「足、挫かなかったか?」

「だ、大丈夫です・・・」


「本当、危なっかしいやつだな」

そう言うなり、ひょいと私を抱き抱えたから

ビックリしてしまって、周りを見渡した。

「ちょっ、下ろしてくださいよ。恥ずかしい!!」

「舗装されてない下り坂だからな。森山なら直ぐ転がり落ちそうで危なっかしい」

「大丈夫ですからっ!!周りの人に見られたらどうするんですかっっ!!」

「どうせ、お前が見られたら困る相手は春坂くらいだろ?」


それはそうだけど、でも・・・

私を抱き抱えながら軽々と、下り坂を下りると、すぐそこにあったベンチに私を下ろす。

不覚にもドキドキしてしまった私は、恥ずかしくて部長の顔を見れなかった。


< 58 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop