下手くそな恋を泣きながら



当初はかなり凹んでたけど、今となってはそれも全部丸ごと初恋の思い出だ。


小さめのボストンバッグを肩にかけながら

あのときの先生の幸せそうな笑顔を思い出す。

思い出を一つ一つ浮かべながら、よく知らない街並みを歩いていく。


ここへ来たのはあの日の風景を思い出した事ばかりが理由ではない。


観光地としてある程度有名なこの場所なら思い出に浸るついでの一人旅にはもってこいな場所だと思ったんだ。


午後2時のチェックインだけホテルで済ませた私は荷物を置いてホテル周りをぷらぷら散歩することにした。



長時間の電車移動で疲れることを予想していたけれど、通勤や普段の移動はできるだけ歩くようにしてるおかげかデスクワークな仕事でも意外と体力はあるようだ。


ホテルの周りの小さな繁華街を歩いていく。

お土産を渡す相手もいないのはこういうときにはお金がかからなくてラッキーなんて思いながら素通りしたお土産屋さんをもう一度振り返った。


お土産を渡す相手はいない・・・そう思っていたけれど、ふと、佳苗先輩に旅行することを口走ってしまったことを思い出して足を止めた。


「小さいものでも買っておかなきゃ、また嫌み言われるかな・・・」


言葉を発するより先に頭に浮かぶ佳苗先輩の予想できる嫌みの数々。

こんな離れた土地に来てまで佳苗先輩のことが頭に浮かぶなんて・・・悲しいさが・・・

いやいや・・・

愛してる証拠かしら・・・



< 6 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop