下手くそな恋を泣きながら


不意に、昨夜の部長の言葉が鮮明に蘇る。

「俺がついてる。」

その言葉の通り・・・

毎回、私の辛いときには部長がいてくれるから・・・

それは、言葉にしても足りないくらいの感謝だ。



恋人でもないのに

ただの部下の私を、いつも心配してくれる。

もしも部長のような人が私の恋の相手だったなら・・・

「それなら黙って俺に構われてろよ」

文句のような呟きに、それはなんだか嬉しいようで悲しいようで、淋しいような感情として、私の心を締め付けた。


もしも部長が私の恋の相手でも

やっぱりそれは・・・報われない。

いつかお姉ちゃんが言ってた。

早くしないと良い男はすぐに他の誰かのものになってしまう的なことを・・・


もしも、部長が結婚するとなった時に

私は心から祝福できるんだろうか・・?

いや、祝福しなくちゃいけないんだよね。

だから今は・・・

春坂先生への気持ちが片付く時までか

先に部長が結婚するか。

その時までは・・・

もうちょっとだけ

ほんのちょっとだけ

部長に構われていたいかもしれない。


「はい!黙って部長に・・・構われることにします。」

冗談半分に泣きそうな気持ちを隠して笑った。


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