下手くそな恋を泣きながら
このメールをきっかけに春坂先生との他愛ないメールのやりとりが始まった。
それから1週間も経たないうちのことだ。
出勤するなり、挨拶した佳苗先輩が訝しげに私をじろじろ見る。
じろじろみてくるだけで嫌みも何もないその態度が逆に気になってしまうから、ついつい私の方から声をかけてしまうんだ。
「彩葉、あんたやっぱり男ができたでしょ?」
突拍子もない先輩の言葉に、朝礼の準備で慌ただしかったオフィスが一瞬静まり、同時に周りの視線が私に集まった。
「できてませんってば!!」
「あんたは顔に出やすいんだから隠しても無駄よ⁉」
「もし彼氏ができたらそんな嬉しいこと隠すわけないじゃないですか!」
っとに・・・
春坂先生と、本当にそんな関係になれるなら、なりたいもんだ。
でも
もし
奇跡が起こってそんな関係になれたとしても・・・
そんな嬉しいことは
隠さなきゃいけない関係になってしまうんだ。
一瞬、部長と目が合ったけれど、いつものように呆れたような表情で逸らされる。
機嫌が悪そうに見えるのはいつものことだったけれど、本当に部長の機嫌が悪いことに気づいたのは朝礼が始まってから気付くことになった。