下手くそな恋を泣きながら


キリの良いところまでそのまま黙々と作業をしていた部長が、不意に腕時計に目配せすると、まだ片付いてない書類を手に取り、棒立ちしていた私のおでこを小突いた。


呆気に取られたままの私は、小突かれても尚、パソコン画面から目を離せずにいた・・・。


「ぼーっとしてんなよ。」

「ぼーっとしていたわけではないです・・・。ただ、部長の仕事を見て、いかに自分がこの5年ただ単に仕事をしてただけなんだって、思い知らされてたんです。」

「・・・良い方向に考えてくれたなら有り難い」

呟くように言ったあと、ため息をつく部長を、ようやく見上げると、目があった部長は仕方なさそうに、困ったような笑顔を作った。


「行くぞ。」

「行くって・・・どこにですか?」

「日曜日までには終わらせないといけないからな。

終わるまでお前は俺んちで合宿だと思え」

「合宿って・・・・部長の家って・・・」


まさか・・・


とくん。と、一瞬高鳴った鼓動。

期待・・・してもいいのだろうか?

思わず部長の目を見つめてしまうと、一瞬、顔を逸らし、きまずそうに私を見つめるその瞳。


「か、勘違い・・・するなよ?」

慌てたようなその口調。

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