下手くそな恋を泣きながら
と、同時に「バカかお前はっ⁉」と怒鳴り出す。
思わぬタイムラグ。
怒られないのかもしれないと一瞬、気を弛めた瞬間の怒鳴り声だったから・・・
油断していたせいで、一瞬、恐くて泣きそうになってしまった。
「えっ?あっ?いや・・・泣くなよ?」
こんな私の反応が予想外だったのか、突然慌てた様子の部長。
「な、泣きません・・・怒られるかもしれないって分かってて・・・言ったんですから・・・」
溢れでてしまいそうな涙がギリギリのところで立ち止まる。
涙は落とさないと、唇を噛み締めて部長を見上げると、更にあわてふためく部長の手のひらが私の両頬を包んだ。
そして、真面目な顔で呟いた。
「森山の力量とまた見合わない仕事をさせようとした俺には大きな責任がある!
そう、俺が悪かった。
俺もちゃんと残りの仕事は一緒に片付けるから、だから、泣かないでくれ?」
真顔で、折れる部長。
そんなつもりで泣いてしまいそうになったわけではなかったのだけれども・・・
切羽詰まったこの状況で、ようやく優しい部長を見れて安心した途端、張り詰めていた糸が切れてしまったように、私の意思とは反対に大粒の涙が溢れてきたから
「お願いだから泣かないでくれ」と、困り果てた部長の声がオフィスに響き渡った。