下手くそな恋を泣きながら


部長が突然厳しくなったのは私にもっと仕事のスキルアップをして欲しいと思ったからなんだろうか。


部長が突然、優しい部長になったのは、私が困らせてしまったからなんだろうか・・・


着替えを自宅に取りに行ったときも、部長の家に着くまでの車内の中でも


運転している部長の左手の指先と私の右手の指先が

繋ぐわけでもなく、ただ微かに触れていた。

微かに触れたままの指先。

手を避ける気持ちもなかった。

避けなきゃいけないとも思わなかった。その代わり、ほんの少しだけ・・・


ほんの少しだけ

この指先の距離感の理由を知りたいと思っていた。




自分でもなんでそんな事を知りたいと思ったのか分からなかった。

分からないけれど

部長とのこういう距離感は・・・


嫌いじゃない。





*********

「先にシャワー、使っていいぞ」

「有り難うございます。」

「こんなに抵抗も見せないのは、ある意味問題だぞ?」

部長宅に着いてから、「仕事再開の前にシャワーでも入るか。」と、牛丼をつつきながら言ってくれたのは部長のほうなのに、お言葉に甘えた途端、シャワーを貸したいのか貸したくないのか分からないこの態度。


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