下手くそな恋を泣きながら


「・・・別に私は部長の後でもいいですよ?」

「そういうことでもないんだが・・・」

ため息混じりに苦笑い。

部長宅での残業は部長本人が決めたことだというのに、面倒になったのだろうか。


一緒に仕事を片付けてくれると約束したからには守ってくれないと私が困る。


「じゃあ先に・・・」そう言い部長が重い腰を上げた時だった。


不意に鳴った私の携帯。

メールだ。

メールを確認しようと携帯に手を伸ばした瞬間

それを遮るように部長の手が、私の手を掴まえたから、驚いて顔を上げると

私と目があった部長のほうが驚いた顔をしていた。


「ぶ・・・部長・・・?」

何が起こったのかよくわからずに、その顔をじっと見つめると、私から勢いよく視線を外した部長が、掴まえたままの私の手を引き上げ、その場に私を立たせる。

よく分からず、されるがまま立ち上がった私を、今度はキッと睨み付け「先にシャワーどうぞ。」何気に怒った口調で、私をそのまま脱衣所へ押し込んだ。

何を理由に突然、不機嫌そうになったのか、全く理解不能。


不機嫌になったり、優しくなったり

態度がころころ変わるから・・・

もしかしたら佳苗先輩の言うように、本当は嫌われてるんじゃないかと、寂しさを感じてしまいそうになる・・・


私は部長の恋人でもなければ恋人候補でもない。

それは、お互い、別々に好きな人がいることを理解しあってるから分かりきってることだけど・・・
< 72 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop