下手くそな恋を泣きながら

それでも

部長に嫌われてるのかもしれないと思うと

胸がぎゅうって締め付けられてるかのように痛くなる。


春坂先生とは違うけど・・・

部長にも嫌われたくないと感じている私がいる。


それは
愛だの恋だのと違った
特別な感情に近いなにか。


部長には恋人がいる。

私には好きな人がいる。

お互い好きな人がいて、単なる上司と部下だけど・・・

その関係性の中に、嫌われたくないとか、そう言う気持ちを持つのは欲張りなことなんだろうか・・・


少し熱めのシャワーを頭から浴びて


部長の使ってるボディーソープを手のひらの上で泡立てた瞬間


不意に鼻をくすぐった部長の香りに、突然、鼓動が跳ねた。

そう、あの日

あの町で偶然部長と出会ったあの日の夜

閉まりかけたエレベーター

私の腕を引き寄せた大きな手のひらと

私をまるごと受け止めた部長の体と・・・匂い。

いつかの胸の高鳴りと

重なる感覚はまるで・・・

忘れることを許さないように

鮮明に

この胸にインプットされているように感じる。



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