下手くそな恋を泣きながら
そんな気持ちを隣り合わせに感じた時
結婚を意識している友達や佳苗先輩の気持ちに近付いたような気がした。
今までは皆、義務のように結婚していくかのように感じていたけれど
「違ったんだ・・・」
窓の向こうの淋しい景色の前に立ちながら
私の声はその暗闇に吸い込まれていきそうだった。
「何が違うんだ?」
突然、頭上から聞こえた声。
体がビクッと凍りついた。
見上げると不思議そうにきょとんとした表情の部長。
この急に押し寄せた孤独感を隠す暇がなかった私は言葉を失ったまま部長を見つめた。
「・・・なんだ?また、春坂か?」
呆れた様子で、一瞬私の頭に伸ばしかけた手が、引っ込むのが歯科医の端に見えた。
部長はやっぱりさっきの事を気にしてる。
「春坂先生は・・・今は忙しい時期だから・・・」
聞かれたことをただ、事務的に答えただけなのに
部長は一つ、ため息をついて「それなら仕方ないな」とだけ呟いた。
中途半端なままの仕事に取りかかろうとするその背中を追いかけてしまった私は、無意識に部長の部屋着の裾を掴まえていた。
驚いた様子で振り返るその目と重なる視線。
掴まえたは良いけれど何も言えないまま視線を落とした。
どうしようもないほど、制御不能なこの思考と体。
自分でも訳が分からない。