下手くそな恋を泣きながら


「部長はその人のどんな所に惹かれたんですか?」

「なんだよ。おっさんの遠い恋話なんて聞いて楽しいかよ」

面倒くさそうな声。

「良いじゃないですか。私だって春坂先生のこと打ち明けたじゃないですか。」

「それは俺が頼んだわけじゃない。」

「それでも。」

恥ずかしいのか面倒なのか、暫く黙りこんだあと、途切れ途切れ、思い出を辿るように部長が一人言を呟く。


「消えてしまいそうな・・・儚い。

花みたいな。

そんな印象だったな。」


なんとなく男性の理想のように聞こえてしまうのは私の性格が悪いからなのだろうか・・・

「初めて会って。会話もしたことなくて、何も知らなかったけれど・・・

それ以来忘れられない」

「・・・それだけ・・・?ですか?」

次の言葉が出てこないから思わず聞いた私に部長は、それだけ。と言い切った。


まるで幼い子の初恋の話のようで

思わずくすりと笑ってしまった。


「部長、意外と乙女ですね。」

「バカにしてるのか?」

冗談っぽく部長は怒るけれど、正直本気でそうか感じた。

まるで幼い子の秘めた初恋のように汚れのないイメージ。

同じ忘れられない恋でも、私と部長とでは、違いすぎる。


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