男嫌いな女王様とクールな臣下
「どこか、行くあてはあるの?」

「どうするも何も、病院も別荘も、すぐに見つかってしまうからな。ここから一歩も出られんよ」

「何度もこんな目にあうからでしょう?
いい機会です。しばらく大人しくしてたらいかがです?」

老人は、困ったなという顔をした。

「そうもいかん、金融商品取引法の一部を改正するための審議に、プロジェクトチームを組んで、わしが座長になって議論を進めておるというのに」


「そうですか」前野は考えながら言う。

「なんだ?」

「十数人が寝泊りできて、セキュリティがしっかりしてる場所が必要でしょう?」

「当てがあるのか?」

「ありますよ。短い時間ならね。
そこなら、テレビ会議のシステム供えれば、議論はできますよ」

「そうか」

「その代わり、ただで用意する訳には行かないですよ。上手くいけば、父さんに一肌脱いでほしいんだけど」

「わかった。何でも言ってみろ」
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