男嫌いな女王様とクールな臣下
前野は、父の前で携帯を取り出して電話をかけた。
「朱音?」呼び出し音のあと、相手はすぐに出た。
「久俊さん、どうしたの?」
元気そうな声が聞けて安心する。
「ちょっと、君にお願いがあるんだけど、今この場で頼んでも平気かな」
「なに?頼みって。私に出来ることならいいけど」
「君の持ってる上のフロアしばらく貸してくれないかな。出来れば今日、すぐにでも」
「それは構わないけど。今、バタバタしてて私、何もしてあげられないの。それでもいい?」
「いいよ。もちろんわかってるって。全部こっちでやるよ。君には迷惑をかけない。
それから、ちょっと機材と人間が入るけど、入室管理とか警備って調整つくかな」
「ええ、警備会社に連絡しておくわ」
「ありがとう。恩に着るよ。あとは、こっちで全部やるから、君は手を煩わせなくていいよ」
「ええ」
「それより、今日は、家に帰れそう?」
「無理だと思う」
「それなら、ホテルを取ろうか?」
「うん」
「わかった。連絡する」