男嫌いな女王様とクールな臣下

朱音が必要事項を書き終えて、前野を見た。

「戸籍謄本って私の分、用意してないけど」
前野が、妻になった女性を優しく抱き寄せる。

「君の本籍はここだから必要ない」

「受理されるのは、役所が開いてからだけどな」
榎田が未練たらしくいう。

「俺は、たまたま手元にあったから」封筒から中身を出した。

「逆に、何でそんなもん持ってるの？」
榎田が目を大きくして驚いた。

「パスポート申請しようと思って、申請してあったんだ、春妃に面接だって連れて来られて旅行どころじゃなくなった。こんなにすぐ仕事を始めるつもりじゃなかったから、まさか、これを婚姻届けに使うなんて思ってもみなかった」

証人欄も署名を終えて、婚姻届けは受理された。