男嫌いな女王様とクールな臣下
約束の日が来て、朱音は宇月と待ち合わせの場所に出かけて行った。

指定されたのは、普通の喫茶店だった。

それを聞いて、影山と榎田も立ち会うと言ってきたけれど、前野がはっきり断った。

「朱音さんについていくのは、一人で大丈夫ですから」
前野はそう言って断った。

紙切れ一枚、役所に提出しただけだけれど、この人は、自分の夫なのだ。

朱音は、そう思うと信じられない気がする。

彼に相談するまで、他に方法があるとは思えなかった。

「どうかした?」

「ちょっと、気分が落ち着かなくて」
朱音は、ため息をつく。

「こっちへおいで」
店に入るすぐ前の路地を、曲がり人気のない通りに引き込まれた。

手を引っ張られ、ギュッと抱きしめられ、彼の唇が自分の唇に押し付けられる。
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